植物工場や施設園芸では周年生産が可能である一方で、年間・安定した室内環境を実現するために大きなランニングコストが課題の一つである。こうした課題に対して、雪冷熱やコンピューターのデータセンター・サーバーの廃熱など、自然エネルギーやリサイクル技術を利用して農業に生かそうとする取り組みが行われている。
夏の酷暑もOK 美唄、雪冷熱活用 ホワイトデータ 実証実験1年
【美唄】雪冷熱を活用する「ホワイトデータセンター」構想で、市などが空知工業団地の施設で進めるコンピューターサーバー冷却の実証実験が、開始から1年となった。データセンター棟(110平方メートル)、ホウレンソウなどを栽培するビニールハウス(155平方メートル)で、計画通り約1600トンの雪で、課題とされた夏季の雪冷熱利用をカバーできることを確認した。効率や採算性を分析し、11月中に結果を公表する。
実験は市と民間5社、室蘭工大の計7団体が主体となり、2014年秋から進めている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業として総事業費40億円で受託し、2019年秋までの5年計画。
このうち実証実験は、データセンター棟にIT企業2社のコンピューターサーバー計174台を置き、ハウスではホウレンソウなど約2400株の栽培とアワビの養殖を行っている。
施設そばの敷地約300平方メートルに道路の除雪で出た雪を約5メートルまで積み、木材チップなどで表面を覆い雪山を造成。雪解け水で冷やした不凍液を施設に循環させ、外気と雪冷熱を使ってセンター棟の室温を制御する。ハウスではこれにコンピューター廃熱も加え、温度制御する。
今年夏の実験では、センター内の室温を25度で安定的に保つことができ、約5メートル積んだ雪山は10月初旬時点で1・5メートルほど残った。事業主体に加わるコンサルタント会社「雪屋媚山商店」の本間弘達社長は「今年の夏は暑かったが、計画通りの雪で安定的に冷熱を供給できた」と話す。
ハウスでは6月の実験開始以降、水耕栽培のホウレンソウを1回、コマツナを2回収穫。温度管理をする場合、しない場合で比較し、同社は「温度管理した方がやや生育が良い。今後は冬の廃熱活用や、トマトやイチゴなど高付加価値作物でも実験する」と話す。水槽でのアワビ稚貝養殖も続ける予定だ。
市産業振興課は「研究成果を活用し事業展開する企業を探したい」と話している。