LEDなどの光源は害虫にとって嫌な光となる場合、おびき寄せることもできる。岡山大学では、光とフェロモンでおびき寄せ、米などにつく害虫「タバコシバンムシ」の捕虫器を開発した、という。
植物工場の閉鎖型でも、虫の侵入を完全に防ぐことができず、施設の外や入口に音や光による害虫対策を行っている所も多い。
光とフェロモンで害虫捕獲 岡山大大学院の宮竹教授ら開発
岡山大大学院環境生命科学研究科の宮竹貴久教授(進化生物学、応用昆虫学)らの研究グループは、米などの貯蔵食料につく害虫「タバコシバンムシ」の行動特性を利用し、光とフェロモンでおびき寄せる新しい捕虫器を開発した。従来の化学農薬を使った駆除法に比べて環境に優しく効率的で、共同研究する捕虫器製造メーカー・ベンハー芙蓉(岐阜市)から新製品として販売を目指す。
宮竹教授らはこれまでの研究で、タバコシバンムシが発光ダイオード(LED)の光のうち、波長375ナノメートル(ナノは10億分の1)の紫外光に最も強く反応する性質を突き止めていた。さらに直射光だけでなく、壁や床に当たった反射光にも集まることを見つけていた。
2012~14年にかけて倉敷市内の倉庫で実証実験を行い、光の強さや性フェロモン剤の効果などを試した結果、性フェロモン剤には雄しか反応しなかったが、強い光は雄雌ともに好むことを確認した。
新しい捕虫器(高さ29・5センチ、幅12センチ、奥行き10センチ)は半円筒形。正面と側面、裏面に計120個のLEDを取り付け、直射光と反射光の両方で誘引できるようにした。背面の内側に性フェロモン剤を付けた粘着シートをつり下げ、タバコシバンムシを捕獲する。倉庫などでは5~10メートルおきに設置すれば雌の捕獲状況で繁殖場所も特定できるため、効率的な駆除が可能になるという。
宮竹教授は「虫の行動を観察するという基礎研究が、応用につながることを示せた」と話している。成果は19日付の米国の昆虫学会誌に掲載された。
タバコシバンムシ 体長約2ミリの甲虫。全国に分布し、小麦や大豆、米、菓子、乾麺などを扱う工場、貯蔵庫で、深刻な食害をもたらす。殺虫剤の代わりに、雌と誤認させる性フェロモン剤を使った捕虫器があるが、雌の駆除が難しい。