植物工場日記 Plantfactory’s Diary

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太陽光利用型植物工場と海水を利用したトマトの生産「オーストラリア Sundrop Farm」

オーストラリアにあるSundropファームでは、巨大な土地に沢山の太陽光パネルを並べ、太陽光利用型植物工場と海水を利用しながらトマトの水耕栽培などを行っている。

太陽光発電と海水利用の農場、オーストラリアで開始

土壌も、殺虫剤も、化石燃料も、地下水も利用しない農場がオーストラリアのPort Augustaで運営開始しました。この農場では、太陽光発電と海水を活用し、作物を育てるのに必要な環境を整える技術を利用しています。化石燃料にも頼らないので、エネルギー市場の影響も受けず、土壌も利用しないので、天候や干ばつの影響も少ない仕組みとなります。

農地の広さは20ヘクタールに及び、そこでは150人の雇用を生みながら遺伝子組み換えではない作物が生産されています。Colesというオーストラリアのスーパーマーケットチェーンと協力関係にあり、750ものアウトレットに直販しています。そうすることにより、仲介を解さず、低価格を維持しています。

 試験版は2010年から稼働

2010年には、南オーストラリア州に試験版として初のSundrop Farmが稼動を開始しました。その地域では、新鮮な水が不足しており、かつ厳しい気候のため、従来の伝統的な農業では適さないと考えられていました。しかし、そうした環境であっても、海水と太陽光を利用したSundrop Farmの技術が、高品質な生産物を生み出していました。

その後、2014年から太陽光発電を集約して発電するシステム等の着工が開始され、2016年10月に商業用規模の農場として本格稼働を開始しました。そのシステムの概要については、以下にて見ていきたいと思います。

Sundrop Farmの風景

図1 Sundrop Farmの風景 出典:Sundrop Farms Advisors

Sundrop Farmのシステム、太陽光をミラーで集約して発電

Sundrop Farmが太陽光と海水だけで作物を作る仕組みについて見ていきたいと思います。まず、電力については2万3千枚のミラーから集めた光を115メートルの受信タワーに集約し、それを電気に変換しています。その発電能力は、晴れた日には39メガワットもの電力を生み出すことが可能としています。

電力は海水を脱塩して真水にする淡水化プラントに利用され、ここで作物の育成に必要な水が作られます。淡水化プロセスは、化学的処理を必要とせず、純粋な蒸留である淡水を生産します。また、太陽熱を活用して温室を温めることが可能であり、逆に温室を冷やしたい場合は、淡水化していない海水が利用されます。この海水には、害虫を近づけない役割もあり、この機能が殺虫剤を利用しない農業の一助となっています。

また、従来のように土壌が使われておらず、ココナッツの殻を利用した水耕栽培が採用されています。栄養豊富なココナッツの殻により作物の成長を促し、かつ雑草の発生も抑えられます。農作物を育てるのには水が大量に必要となりますが、それは前述の海水から作った水や、ときには屋根に貯まった雨も利用されています。水は複数回にわたり再利用され、廃棄物は最小限に抑えられるとしています。

sundropシステムの概要

図2 sundropシステムの概要 出典:Sundrop Farms Advisors

現在、ポルトガルのOdemiraと米国のTennesseeでも農場建設が計画されています。さらに、砂漠の広がっている地域など、気候条件などが厳しく、従来は農業に適していないとされてきた地域でも、さまざまな農作物を栽培できるポテンシャルがあります。実際に、そうした不毛の地域であれば、従来農法の5~30倍の高い収穫を期待できるとしています。

一方で、今回のオーストラリアの農場では初期投資として2億ドルが発生しており、これは従来の方法よりも割高となっています。しかし、再生可能エネルギーを活用しており化石燃料の購入費を削減できるので、長期的な目線でみると経済的にもメリットがあると期待されています。

2050年には人口増加に伴い、食料消費も50%増加するとみられています。そうした環境において、再生可能エネルギーを活用したクリーンな形で農地が拡大していくことが期待されます。

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