メディアではパクチー(コリアンダー)のブームが報道され、高付加価値商品を目指して植物工場でもパクチーを生産したらどうか、といった相談も多いようだ。しかし、メディアにて様々な取り組みや情報が報道されている現時点においては、少し生産をスタートするには遅いかもしれない。
需要と供給のバランスが崩れ、価格高騰していた数年前と異なり、現在では生産する農家も増え、市場における取引価格は安定しているようだ。
ただし、パクチーが一般消費者に認知された中で、加工品などの商品開発は今後もビジネスチャンスがあるかもしれない。
◇加工品や「生」 県内でも
◇食べ方提案 ファン浸透
独特の香りが「カメムシのよう」と表現されることもある香草パクチー。英語でコリアンダー、中国語で
「パクチーファンの方、大変お待たせしました」。そう書かれた緑色のパッケージを開けると、中にはパクチーそのものを揚げた「パクチーチップス」が。昨年3月に発売されると、30万袋以上を売り上げるヒット作に成長した。
開発した食品会社「味源」(まんのう町)の西山泰和社長の妻、美帆さんが台湾出身で、故郷の味を懐かしんでいたことから「手軽に食べられる商品を」と手がけたのが始まり。好みがはっきりと分かれる香草だけに、万人受けは捨てて「好きな人がとことん満足できる味」を追求したという。
火を通すと香りが落ちるため、パクチーの香りがする粉末を仕上げに振りかける徹底ぶり。それでもパクチーファンからは「物足りない」との感想が寄せられ、夏頃にはさらに香りを強めた商品に刷新する予定だ。
◇新商品 いち早く
パクチー味の柿の種やミックスナッツ、ポテトサラダなどの新商品も出した。パクチーの葉を模したロゴを作り、「パクチーズ」としてブランド展開していく予定で、広報担当の南剛さんは「大手が進出する前に、いち早く浸透できれば」と意気込んだ。
県内でも、スーパーなどでは徐々に生のパクチーや加工品の取り扱いが増えている。
業界大手のマルナカ(本部・高松市)は、昨年8月頃から大型店を中心に販売を強化。パクチー風味のドレッシングやカップ焼きそばも人気で、担当者は「若者を中心に受け入れられている」と手応えを語る。
マルヨシセンター(同)も、県内の8店舗で生のパクチーを販売。より質の高いものを求め、昨冬からは県内の契約農家に栽培を依頼し、1店舗で試験的に販売している。同市川部町のビニールハウスで栽培している北原吉富さん(62)は「独特の香りからか、虫が寄り付かず栽培しやすい」と話す。水耕栽培ではなく土で育てているため香りが強く仕上がるといい、「香川にも人気が広がれば」と期待する。
◇「一度挑戦して」
「どうしても、あの香りは無理」。高松市のスーパーで買い物途中の主婦(39)がそう顔をしかめるように、県内でのブームはまだこれからだ。パクチーチップスは首都圏を中心に消費され、マルヨシでも「生のパクチーは販売に力を入れ始めたばかりで、売り上げがどうこう言う段階ではない」。消費拡大を目指し、「まずはパクチーを使った総菜を出して食べ方を提案していきたい」と明かす。
あえ物など、多くの料理にパクチーを使っている中華料理店「SHIGI」(高松市)のオーナーシェフ、鴫山惠一さん(35)は「辛い料理によく合い、雰囲気をがらっと変えられる」と魅力を語る。「世界中で食べられてきた野菜。ギョーザに練り込んでも十分おいしく、一度挑戦してほしい」と話した。