北海道は涼しく、夏場でもイチゴの生産が可能である。しかし、イチゴに最適な栽培環境を実現するためには空調管理や室内の環境制御が必要である植物工場であれば、こうした夏秋も含めたイチゴの周年生産が可能となる。
苫東ファーム、イチゴ生産拡大へ 新しい栽培施設完成し祝賀会
苫小牧東部地域(苫東)でイチゴの通年栽培を展開する苫東ファーム(苫小牧市柏原、櫛田安良社長)は、完成させた新しい栽培施設を稼働させ、生産拡大に乗り出した。情報通信技術(ICT)を活用した巨大温室施設の面積を2倍の4ヘクタールに広げ、早ければ2017年度から道外の洋菓子メーカーなどへの出荷を開始する。高橋はるみ知事などが出席した新施設の完成祝賀会が4日に開かれ、苫東で展開される植物工場の発展に期待を寄せた。
完成したのは、既存施設(面積2ヘクタール)とほぼ同型の軽量鉄骨造りフィルム温室(同2ヘクタール)で、既存施設の西側に建設。同社が当初計画していた4ヘクタールのイチゴ栽培施設がすべて完成した。
新施設では、夏季に品種の「すずあかね」、冬季は「とちおとめ」「べにほっぺ」を生産する。これまでは道内の洋菓子店を中心に通年出荷していたが、安定した生産量が確保できれば17年度から、首都圏などへの出荷を開始する。
今年度は既存施設の2ヘクタールに加え、新施設のうち約1ヘクタールでイチゴ栽培を行い、年間生産量170トンを目標に掲げる。17年度は両施設を合わせた計4ヘクタールで栽培し、年間生産量314トンの実現を目指す。
同社の施設で開かれた祝賀会には、高橋知事や農林水産省の鈴木義典生産振興審議官など関係者約40人が出席。櫛田社長はあいさつで「今後は本州、さらにはアジア圏を中心とした海外への輸出も目指したい」とし、「北海道のイチゴ産業の発展に寄与できれば」と語った。
高橋知事は、ICT活用の高度な生産活動を高く評価し「実証した技術やノウハウを広く国内外に発信し、道内農業の魅力を高めることに期待したい」と述べた。
同社は、農水省の「次世代施設園芸導入加速化支援事業」を活用して施設を整備し、15年7月から試験栽培を開始、通年栽培を実証した。道などは、苫東で農作物の通年生産が可能な施設を集積させた「植物工場クラスター」の形成を目指している。